フロントロウ2019年春夏メンズコレクション

ビルケンシュトックの魅力は、セックスと健康の融合」リック・オウエンス interview

「今はグラムに傾いてるんです」。Birkenstockとのコラボ第2弾のローンチのさい、リック・オウエンスはこう明言した。「自分自身、文化や自然の衰退については苦々しく思ってるし、力ずくで楽天主義に傾かせてるって感じですね。元気出そうよ、って」

2019年春夏メンズコレクションでは、フロントロウに色付きスモークを垂れ流し、異世界を思わせる印象的なかたちのスポーツウェアを提示。同シーズンのウィメンズコレクションでは、サバイバルウェアに身を包んだパワフルな女性たちにトーチを持たせ、世界に火をつけた。私たちが暮らす世界の混沌とした社会政治への、怒りに満ちたクリエイティブな反抗を表現していたのが、近年のショーだった。

しかし世界が炎に包まれた今、カリフォルニア出身で現在はパリを拠点とする、永遠の独立系デザイナーたるリック・オウエンスの関心は、グラマーと心地よさに見いだせる楽観主義に向いている。最新の2019年秋冬コレクションでは、LaBelle、KISS、グレース・ジョーンズ、ディバインなどをはじめとする名だたるスターのアイコニックなルックを手がけたラリー・ルガスピのストーリーに渦巻く、グラムロックの欲望と悪徳を称えた。そしてリックは今回、抜群の履き心地を誇るBirkenstockのサンダルに、アーキテクチュラルな魅力を加えた。

Rick Owens’s glam Birkenstock sandals
Rick Owens x Birkenstock spring/summer 19. Image courtesy of Birkenstock
マーク・ジェイコブスが手がけ、最近復活を果たしたPerry Ellisの1993年グランジコレクションから、フィービー・ファイロ時代のCélineの2013年春夏コレクションで発表されたファー付きサンダルまで、ゲルリッツ製のBirkenstockサンダルは、これまで何度もファッション界で〈もてあそばれて〉きた。しかし、Rick Owensは違う。彼らにとってBirkenstockは、アーカイブアイテムの刷新も新スタイルの提案も叶える、まさに理想のクリエイティブパートナーなのだ。

「リック・オウエンスはもっとも時代性がある、最後の独立系デザイナーのひとりです」とBirkenstockのCEO、オリヴァー・ライヒェルトはリックを評する。「彼のデザインで、アイコニックなBirkenstockのスタイルが変容する。このふたつのブランドには、当初多くのひとが想定していたよりもたくさんの共通点があったんです」

Clara Deshayes wearing Rick Owens x Birkenstock
Clara Deshayes wearing Rick Owens x Birkenstock spring/summer 19. Photography Olivier Zahm
「ただ単にサンダルを装飾することには興味がない。スパンコールやスタッズをあしらうだけにはとどまりたくない」とリック。「今回私は、個性的なかたちにこだわりました。だからストラップを長くした。これを実現するのがどれだけ大変だったか、みんなには想像もつかないはず。Birkenstockが重要視するのは、何よりもまず安全性。それが彼らの価値観ですし、私はその点で彼らを尊敬しています。そもそもそれこそが、彼らといっしょに仕事がしたいと思ったきっかけですから」

彼が生み出す世界といえば、かたちを変える、抽象的な白昼夢。想像のなかの光の当たらない場所に潜むもの。しかし、リックのベースにはカリフォルニアのヒッピー文化があることを、彼自身が思い出させてくれる。「私たちがいっしょにやることには意味がある」とリック。「私も裸足で履くサンダルは大好きです。Birkenstockにはカウンターカルチャー的な要素もあれば、1960年代のノスタルジーも感じられる。最初は驚きのコラボだったかもしれないけど、わかるひとにはわかったんじゃないかな」

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